赤色に塗られた土器。これはベンガラという酸化第二鉄(Fe₂O₃)を塗った土器です。鹿嶋で見つかる縄文土器に塗られた「赤色」はベンガラです。ベンガラは赤く発色した「鉄さび」を主成分とする赤色の顔料。赤色・朱色は血液の色でもあり、生命につながる特別な意味をもっていました。ベンガラの使用は旧石器時代にまで遡ります。
赤を塗った土器はどのくらい出土するのでしょうか?縄文時代の集落を調査すると出土する土器の数パーセントで、極めて少ないことから、特別な信仰に関わる儀式に用いていたことが予想され、日常的な使用はしていなかったと考えられています。
例えばこの土器。鍛冶台遺跡という鹿嶋市厨地区に分布する縄文時代中期の集落の土坑から見つかった土器です。内側に黒と赤で渦巻が描かれています。黒の中に朱で描くといっそう呪術的な土器に見えてきます。
また、同じ鍛冶台遺跡の別の土坑からはベンガラが入った土器が出土しました。直径10㎝、高さ8㎝の外面に何も文様のない縄文土器です。何か特別な儀式や特別な土器に塗布するためにベンガラを保存していたのでしょう。
土の中で約4500年埋まっていた土器でもこれだけの赤色をしているのですから、縄文人が使っていた時はもっと鮮やかだったのかもしれません。
「赤色」の顔料は、縄文時代には大きく二種類あったことがわかっています。ベンガラ(酸化第二鉄)と水銀朱(硫化水銀)です。これらの色は顔料を直接または漆液に混ぜて彩色していたようです。炎や血と同色の赤色は呪術・霊力があるものと信じられ、土器や土偶に塗られたり、魔よけや防腐剤として木棺や石棺に塗られたり古墳のなかにまかれたりして使われてきました。また赤色は、縄文人が装飾品として用いたヒスイに代表される緑色とは補色(正反対の色)の関係にあり、同時に用いることでいっそう互いを引き立たせる効果があります。緑色は自然の豊さを示す色であり、生命力を示す赤色とともに縄文人の精神世界を彩ったのでしょう。
どきどきセンターPRESENTS-ココロオドル鹿嶋を再発見-
鹿嶋市どきどきセンターは、鹿嶋市内の発掘調査や鹿嶋の歴史・文化を伝える事業を展開しています。今回より全24回、鹿嶋市内の発掘調査の出土品からみえる鹿嶋の歴史や文化・食生活など紹介していきます。また、どきどきセンターの企画展や事業をお知らせします。