ココロオドル鹿嶋を再発見vol.19~縁起の良い絵を描いています!~

鹿嶋市どきどきセンターby:鹿嶋市どきどきセンター

図1:「鶴亀松竹蛇」が墨書された土師質土器

 「鶴は千年、亀は万年」ということわざがあります。これは長寿の象徴とされる鶴や亀を挙げて、長寿をお祝いする際に用いられる言葉です。実際には鶴は野生で20~30年、亀は50年以上生き、もちろん千年・万年とはいきませんが、昔の人々は縁起の良い動物の代名詞として、昔から大事にしていました。

 こうした昔の人々の価値観をいまに伝える土器が、鹿島城跡から出土しています。これは、絵画墨書土器といい、器の内面に「鶴・亀・松・竹・蛇」が描画されています。

 四方に鶴亀松竹が配され、中央に蛇が表現されるという構成で、筆による流れるようなタッチで描かれています。

図2:「鶴亀松竹蛇」墨書の土師質土器実測図

 また、松竹も古来より長寿延命の木として重宝され、蛇も「白蛇」などは金運に恵まれるということで、大変縁起の良いものとされてきました。

 それでは、なぜ土器に縁起物を描いたのでしょうか。

 この取り合わせを調べると、『鶴亀物語』という物語本にたどり着きます。

 この物語は室町時代に流行した文学作品で、鶴や亀、蛇などが登場し、そうした縁起物を通じて夫婦の睦まじい様子が表現されている作品です。

 物語の舞台は常陸国でもあり、当時は流行した物語であったようです。

 この物語を直接土器に表現したかはわかりませんが、縁起の良いものを土器に描くということから、この土器も縁起物として用いられたと考えられます。

 土器の年代も15世紀から16世紀代と考えられ、『鶴亀物語』が流行した頃と年代的にも一致します。あるいは、物語を読んだ鹿島城の人たちが描いたのかもしれません。

図3:鹿島城跡平面図

 なお、鹿島城はこれまで何度か調査が行われており、地鎮行為が行われた跡など、当時の人々の精神世界が覗けるような遺物が出土しています。こうした出土遺物をひとつひとつよみとくことによって、鹿島城に住んでいた人々がどういったことを考えていたのか推測することができるようになるのです。

図4:鹿島城検出の掘立柱建物跡

 いまはきれいに整備されて中世の鹿島城の風景はわかりませんが、土の下には往時の痕跡が残されています。

 いまだ調査していない土の中には、鶴や亀が長い年月眠っているかもしれません。鹿島城にはいまも多くの歴史が残されているのです。

どきどきセンターPRESENTS-ココロオドル鹿嶋を再発見-

 鹿嶋市どきどきセンターは、鹿嶋市内の発掘調査や鹿嶋の歴史・文化を伝える事業を展開しています。全24回、鹿嶋市内の発掘調査の出土品からみえる鹿嶋の歴史や文化・食生活など紹介していきます。また、どきどきセンターの企画展や事業をお知らせします。


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