古墳に眠る宝物⑨二子塚1号墳出土 馬形埴輪

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 「古墳に眠る宝物」の第9回は、前回に引き続いて古墳を飾る埴輪の中から、馬形埴輪を取り上げます。馬形埴輪とは、人間との関わりが深い動物を模したと考えられる動物埴輪の一種です。馬は動物埴輪の中では比較的メジャーな動物ですが、鹿嶋からの出土は珍しく、貴重な宝物と言えるでしょう。
 第6回の人物埴輪の回でも触れましたが、鹿嶋市大字津賀にある二子塚1号墳から馬形埴輪が出土しています。見つかった部位は、2体分の柱状のたてがみ・鞍・尻尾、1体分の鞍から後脚・頭部の一部です。人物埴輪や円筒埴輪などとともに南側の周溝から出土しましたが、墳丘から滑落したもので原位置をとどめてはいないと考えられています。

 部分的な出土のため、馬の全体像や顔が明確に示せるわけではないのですが、その特徴的な形から、飾り馬を表していることがわかります。飾り馬とは、轡(くつわ)鞍(くら)といった馬具を豪華に飾り付け、所有者が権力の象徴としたとされる馬です。現代の人間で例えるならば高級車に近い感覚でしょうか。これが古墳から見つかることで、埋葬された人物の権力を推測する材料になるのです。

 この二子塚1号墳の馬形埴輪からは、鞍の部分や鐙(あぶみ)の部分、お尻から尻尾にかけての飾りなどが読み取れます。それぞれの飾り・馬具が馬のどの部位に位置するか、見慣れない用語ばかりで難しいかもしれませんが、詳しくは下図をご覧ください。
 鞍とは、人が馬に乗りやすくするために背中にかける馬具のことです。泥よけの障泥(あおり)、馬にまたがる際に足をかける鐙は粘土紐を貼り付けて表現されています。鐙は上部が垣間見えるのみですが、その形から輪鐙ではないかと考えられます。鐙にはいくつか種類があり、使われた年代も違うため、輪鐙の使用はこの馬形埴輪の特徴であり、製作年代を考える材料のひとつです。
 鞍の後輪から2本の帯・尻繋(しりがい)雲珠(うず)に伸びていますが、ここに杏葉(ぎょうよう)などの飾り金具は着いていません。これもこの馬形埴輪の特徴です。
 馬をかたどった馬形埴輪は、見た目はかわいいですが、ただのマスコットというわけではありません。細かな部位それぞれに特徴があり、埋葬された人物や年代についての示唆にも富んでいます。やはり貴重な宝物なのです。

二子塚1号墳出土馬形埴輪
馬形埴輪・馬具略図

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