古墳に眠る宝物⑩玉類

アバターby:鹿行ナビ

 第10回目は玉類と鉄製品です。玉類は第1回で勾玉を取り上げましたが、古墳から見つかる玉には様々な玉があり、多くの玉類は被葬者とともに石棺内に副葬されたものです。
 宮中野古墳群第98-2号墳ではナツメ玉が6個、ガラス製の小玉が25個出土しています。
 ナツメ玉は棗の果実に似ているためこの名称がつけられており、琥珀製が多く硬玉製や水晶製、ガラス製のものがあります。第98-2号墳出土のものは琥珀製で、玉の大きさは様々で、長さ2.4㎝、最大幅1.4㎝が最も大きく、長さ1.1㎝、幅0.6㎝が最も小さいものです。

第98-2号墳出土のナツメ玉

 ガラスの小玉は最も大きなもので4㎜、小さなものは2.5㎜と全体的に小さな玉です。これらの玉は連ねて首飾りや腕飾りとしたと思われます。

第98-2号墳出土のガラス玉

 これらの玉類が出土した第98-2号墳は、昭和41年12月に行われた浄水場建設に伴う1次調査、昭和43年に実施した2次調査の中で、最も出土品の多い古墳です。

第98-2号墳 墳丘測量図

 第98-2号墳は、宮中野古墳群の中でも西に位置する古墳で、墳丘は調査時点で削平が著しく、原形をとどめていませんでしたが、調査の結果全長31.5m、周溝を含めると約41mの前方後円墳であることがわかりました。前方部幅約20m、高さ約1.3m、後円部径約20.5m、高さ約1.6mであり、後円部の方が高く、前方部が開く墳形です。
 くびれ部分では周溝内から多数の円筒埴輪や人物埴輪が出土し、手の破片数から3体以上の男子の人物埴輪が立っていたことが想定されます。

第98-2号墳埴輪の出土状況図

 ナツメ玉や小玉が出土したのは後円部の墳丘南側裾に位置する主体部の土坑であり、鉄製の刀や刀子、鉄鏃も伴出しています。主体部は土坑に粘土で石棺材を固定していた構造で、調査時には石棺材は全て抜き取られていました。  
 また、前方部北角の周溝内からは土玉が、主体部の外側から須恵器フラスコ型の長頸瓶も出土しています。  第98-2号墳は埴輪の出土が少ない宮中野古墳群において、人物埴輪が出土していることや、出土した玉類・刀・鏃などからみて、古墳群内の他の古墳より少し古い段階の古墳と考えられています。


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