
行方市 西蓮寺
鹿行地区の寺院と神社を巡り、伝統行事や御朱印などをご紹介いたします。今回訪れたのは行方市の西蓮寺。重要文化財の仁王門や相輪橖、天然記念物の大イチョウ、9月末に行われる「常行三昧会と仏立て」の魅力などを伝えます。
延歴元年(782年)、天皇の勅願によりの弟子・最仙上人が開山したと伝えられ、俗に「常陸の高野山」ともいわれます。
鎌倉時代の中頃、比叡山の無動寺からが来て七堂を造営し、京都のの門跡忠尋大僧正が、乱を逃れてこの寺に来てとどまり、曼殊院の額を山門に掲げたと伝えられています。明治時代に火災にあい、仁王門と相輪橖を残して焼失しました。
西蓮寺の伝統行事であるは、寛治年間(1087〜94年)に地元の長者が比叡山より移したものとされています。西蓮寺の末寺、門徒寺の僧侶が常行堂に集まり、9月24〜30日の七日七夜にわたって、堂内を回りながら独特の節まわしで立行する大法要です。初日、中日、末日には、境内での名残をほうふつさせる雅な行列が見られます。
また、「常陸高野」と呼ばれるように、この法要は「仏立て」といわれ、宗旨の別なく近郷近在はもとより遠隔地からの供養に参詣人が訪れます。そして、この期間には現在も市が開かれにぎわいを見せています。
仁王門

天文12年(1543年)に建立されたもので、もとは三間一戸の楼門(二階建)でした。寛政年間(1789〜1801年)に楼門の二階部分を取り壊して山門(一階建)となりました。蟇股(かえるまた)蓑束(みのつか)の形が特異とされており、室町時代末期特有の地方色を見ることができます。
御朱印

左より、延命地蔵尊、本尊薬師如来、寿老人(常陸七福神)
大イチョウ

一号株は幹囲約6メートル、樹高約25メートルで、開山最仙上人の御杖銀杏と伝えられています。二号株は幹囲約8メートル、樹高約27メートル。樹齢は二株とも1000年以上といわれていますが、二株とも雄株なので実はつきません。晩秋の黄葉は見事で、広い境内を明るくしています。

相輪橖
弘安の役の戦勝を記念して、弘安10年(1287年)に建立したものとして伝えられています。高さ9.16メートルで、基壇、橖身、頭部の3つに分けられ、錫杖(しゃくじょう)の形に似ています。相輪橖は天台宗の象徴とされるもので、比叡山延暦寺と日光輪王寺のものと並び貴重なものです。
常行三昧会と仏立て


七日七夜にわたる立行誦経は日本で唯一の永代供養(仏立て)で、住職たちが独特の節まわしで常行堂内を回る尊い姿を見ることができます(左)。平成13年(2001年)に行方市無形民俗文化財に指定されました。籠行列も見どころの一つです(右)。
(この記事は月刊アントラーズフリークスのホームタウン浪漫紀行に加筆修正を加えて掲載しています)