潮来市の常陸利根川(北利根川)沿いを走っていると、白い彼岸花を発見し、思わず足を止めた。調べてみると、赤い彼岸花と黄色い鍾馗水仙(しょうきずいせん)の自然交雑種である白花曼殊沙華(しろばなまんじゅしゃげ)だという。
水郷北斎公園の先で、右に三熊野神社(みくまのじんじゃ)の鳥居がのぞく。ここでも思わず、右折。無計画に走っているから、ルートは気分次第で変更する。
この神社では樹齢350年の大イチョウを発見。乳状の気根がいくつもある。説明看板には樹勢回復のため、助成金で土壌を改良したとある。
三熊野神社の背後の権現山公園への坂を上ってみるが、残念ながら蜘蛛の巣だらけで荒れている。早々に川沿いの小道に戻った。
走り始めた午前6時半には霧が立ち込め、数百メートル先の鉄橋も隠れるほどだった。そんな中、体操中のお年寄りに「きょうは霧が出ているから、秋晴れになるよ」と声を掛けられた。
「そういうものなのか」と思って三熊野神社まで走り続けてきたが、その先の常陸利根川と霞ヶ浦(西浦)の境界まで来ると、霧が徐々に晴れてきた。薄くはあるが、青い空が雲間から少しずつ、のぞめるようになった。
うっすらとした水色の空と灰色の雲、白い雲が重なり合う景観はなかなか美しい。ウィリアム・ターナー(英国)の風景画のようでもあり、やんわりとした光に心が癒される。
さらに時間が経過すると、お年寄りの言葉どおり、空はきれいに晴れ渡った。水路沿いのフェンスで西洋朝顔の赤い花が輝いている。この季節、霧が立ち込めたら秋晴れになる、と心に刻んだ。
このあたりには比較的、巨樹が多いような気がする。遠めから見ると寺社かと思うが、屋敷森の痕跡だろうか、民家に巨樹が単独で残っている。家々の守り神的な存在なのかもしれない。
走っているうちに、いつの間にか行方市に入っている。日帰り温泉施設「あそう温泉 白帆の湯」に至るが、まだ営業開始前だ。
隣の八坂神社は7月に開催される(今年はコロナウイルスのため中止)麻生祇園馬出し祭りで知られる。馬をヤマタノオロチに見立てて、スサノオノミコトを奉じた神輿ともみ合う。
白帆の湯の北側、霞ヶ浦の湖岸の天王崎公園で折り返し、潮来方面へと戻る。この公園は夕日のビューポイントとして人気が高い。
私が走るのはほとんどが早朝だが、今度は夕景を眺めながら走り、白帆の湯にゆったりつかるというのがいいのかもしれない。
文・写真:吉田(鹿島アントラーズ 地域連携チーム)