暁光に染まる幻想的な世界〜鹿行の道を巡る〜

鹿島アントラーズby:鹿島アントラーズ

長さ約1キロの神宮橋を境に北浦と鰐川(わにがわ)が分かれている。鹿嶋市からその神宮橋を渡って潮来市に入り、すぐ左折して鰐川の右岸を走る。

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日の出の直前に、ここで眺める風景は何とも言えない。東の空がじわじわと曙色に染まっていき、その色は雲にも及ぶ。暁の空の何と幻想的なことよ。適度に雲があったほうが、魅力は増す。

空が白々としてから、日の出が迫る間の数十分、その絵画のような風景の色合いは刻々と変わる。もちろん、その日の雲の表れ方によって風景は異なる。同じ「絵」は存在せず、それぞれに価値がある。

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河岸にアオサギがたたずみ、小魚を狙っている。そのシルエットもまた絵画のようだ。見上げるとチュウサギが2羽、3羽、ゆったりと川を渡っていく。

水面(みなも)に目を移すと、ボラなのだろうか、あちこちで魚がポーン、ポーンと跳ねている。唯一、躍動的な存在として静寂の世界にアクセントをつけている。

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神宮橋から鰐川橋まで堤防上を走ると5キロ弱。右岸を東に向かっていくと、その先に鹿島臨海工業地帯のコンビナートが望める。

自然とは対極にあるはずの建造物が不思議なくらい、うまく自然の中に収まり、たなびく白煙が風景の味わいを深くしている。

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神栖市の火力発電所を起点とする高圧送電線の鉄塔が並列する形で潮来市の水田に立ち並ぶ。その姿もまた絵になる。

何でもない景観ではあるが、日の出の時間に足を運んでみると、立ち止まって目に焼き付けたくなるポイントがたくさんある。暁光の演出によって、煙突も鉄塔も稲田も屋敷森も見事に引き立つ。

そういえば、このあたりからは冬の空気が澄んだ朝に富士山が望めることがある。昨冬、その幸運に遭った。

そんなことを思い出しながら、のんびりと走っていると、鰐川を挟んで鹿島側の丘の林の隙間から暁光が差し始める。いよいよ真っ赤な太陽が顔をのぞかせる。

そこから先はあっという間であり、日がある程度、上ってしまえば、普通の世界が現出し、ゴージャスな時間は終わりを告げる。この幻想的なショーは限られた時間にしか楽しめない。

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だからまた、日をあらためて走ることになる。

文・写真:吉田(鹿島アントラーズ 地域連携チーム)


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