「古墳に眠る宝物」の第6回は二子塚1号墳出土の人物埴輪頭部です。
埴輪は古墳を飾ったり、不思議な力で神聖な古墳(棺)を守ったりといった用途が考えられています。
今回の埴輪が見つかったのは、鹿嶋市大字津賀にある二子塚1号墳です。他にも円墳1基が確認されており、二子塚古墳群を形成します。鹿嶋市内で埴輪を持っている古墳は珍しく、二子塚1号墳はその貴重な例と言えます。この古墳の造られた時期は、調査時に見つかった複数の円筒埴輪の特徴から6世紀代と考えられます。過去の畑地開墾に伴い、墳丘は大きく削られてしまいましたが、幾度かの調査により墳丘を全周する周溝を持ち、全長20mの前方後円墳であることがわかっています。(現在は私有地の中にあり、見学はできません。)
この人物埴輪の頭部は、平成10年度の調査で古墳の南側くびれ部周溝内より出土しました。墳丘から滑落したとみられ、原位置はとどめていません。近くからはこの他にも人物埴輪の顔の一部や手・肩、部分的に白色に塗られた服の一部、円筒埴輪片や馬形埴輪片などが一緒に見つかっています。
今回紹介する人物埴輪の頭部は粘土を螺旋状に積み上げて成形しています。その後、額に粘土紐を巡らせ、帽子を被るような表現がされています。首には粘土で玉飾り(ネックレス)が表現されていたとみられます。目や口は頭部成形後に刀子を用いて穿孔しています。口の上下には工具を用いて引かれた薄い2本の平行な線が観察され、口と鼻の位置を決定するための目印と考えられます。鼻は粘土を貼り付け盛り上げて作っています。頭部左右には穿孔によって耳の穴が表現されますが、耳たぶ等の表現はありません。
焼成は全体的にやや悪く、特に後頭部側が前頭部側よりも悪く、剥離も広く見られます。埴輪に使用した粘土の中には約1.0mm以下の砂質粒子、赤褐色のシャモット、砂利のほか、金雲母、白雲母が含まれています。
この埴輪が男性を表現していることはわかりますが、頭部だけということで具体的にどんな立場の人を模したものかはわかりません。調査時点では農夫の埴輪とも言われていました。しかし、近年までの調査成果で見つかっている似た形の頭部を持つ埴輪や、この人物が玉飾りといった装飾品を身に着けていることから、ある程度位の高い人物を表した埴輪と考えることもできそうです。