古墳に眠る宝物③ 石枕

アバターby:鹿行ナビ

第3回目は国神神社のご神体「石枕」です。
石枕は字のごとく、石製の枕のことで、古墳に眠る被葬者の枕として使われたものです。

国神神社の御神体である石枕(鹿嶋市指定文化財)

 滑石という加工のしやすい石で造られています。滑石の関東地方における主な産地は群馬・埼玉県境の「三波川変成帯」と常陸太田市南東部の「日立変成帯」です。常陸太田市の滑石は東関東を中心に分布しています。

滑石製の古墳時代祭祀具(臼玉・石製模造品・子持勾玉)

 古墳時代中期から後期にかけて、臼玉や石製模造品、子持勾玉など祭祀に用いられる道具の多くは滑石を加工して造られます。石枕もその一つで、枕の周辺には細かい線で文様が刻まれているものや、小さな穴があいているものもあります。この穴は立花(りっか)と呼ばれる勾玉を背中合わせに二つあわせたような飾りを差し込むところです。
 石枕は千葉県北部から茨城県南部にかけての古墳から出土しています。「香取海」と呼ばれる内水面を囲むように、石枕文化圏というほど全国的に見ても石枕の出土する古墳が集中しています。この地域の石枕は滑石系統の石材で、5世紀代の木棺直葬の古墳から多く出土しています。石枕で眠る被葬者たちの繋がり、関係性が注目されるところです。

利根川下流域にひろがる石枕の分布図

 市内の国神神社の御神体である石枕(市指定文化財)は周辺の国神古墳群から出土したと考えられています。国神古墳群は現在湮滅してしまっており、古墳群全体の様相はわかりません。
 平成8年に調査された国神古墳の主体部は、墳丘の粘土層を長方形に掘りこんで構築された木棺直葬で、火葬もされたという特異な古墳です。直刀や鉄鏃が出土しており、6世紀後半から7世紀代の古墳と考えられています。
 鹿嶋市内にはもう一点鹿島神宮に収蔵されている石枕があります。この石枕が市内出土かは不明ですが、石枕文化圏の北東に位置する鹿嶋の存在を主張してくれる資料です。


文化一覧ヘ