ココロオドル鹿嶋を再発見vol.24~祈りを込めたお人形~

鹿嶋市どきどきセンターby:鹿嶋市どきどきセンター

 みなさん子供の頃にはどんなおもちゃで遊んでいましたか?人形やぬいぐるみを持っていた人も多いと思います。いつの時代にも子供の玩具は存在していました。その中でも今回は、江戸時代の今戸人形を紹介します。

 今戸人形は、東京浅草の今戸や隅田川流域で作られていた土人形です。江戸を代表する玩具の一つで、雛人形や稲荷の狐、恵比寿、大国などさまざまな種類の人形が作られたそうです。また、丸〆猫という背中に「〇に〆」のマークがある人形があり、招き猫の起源ともいわれています。

 鹿嶋市神野に所在する神野遺跡では、お墓からたくさんの今戸人形が見つかっています。お墓は、長軸95cm、短軸80cmの方形をしており、二段式の掘り込みで深さは、上段の底面で70cm、下段の底面で90cmになります。下層からは、幼児2体の人骨が見つかりました。そして人骨の周りからは、30点の今戸人形や伊万里系の小型瓶2点、小皿1点などが見つかりました。堆積の状況から、幼児を埋葬した際に一緒に入れられたものと考えられます。

SK3(土人形出土の土坑)
伊万里系小型瓶、小皿

 今戸人形は女雛(めびな)7点、裃人形(かみしもにんぎょう)12点、這子(ほうこ)1点が出土しました。女雛は、座った姿の官女(かんじょ)が12点、立った姿の太夫(たゆう)が5点でした。彩色は、下地として塗られた白色、髪や帯にわずかに黒色、襟や袖の一部に赤色がわずかに残っています。

今戸人形(裃雛・官女・太夫)

   

今戸人形(這子)

 他にも、鉄製の釘やハマグリ、タマキガイ、ツメタガイなどの貝類も一緒に出土しています。鉄製の釘には木質物が付着しており、おそらく木箱に使用されていた釘だと考えられます。また、貝類は周りを扁平に削った痕跡がみられるものがあり、玩具として使用していたと考えられます。

タマキガイ

 30点にも及ぶ今戸人形が一つの遺構から出土する例は少なく、鹿嶋では神野遺跡でしかみつかっていません。これらが江戸から持ち込まれたものだと考えると、当時の経済的にも恵まれた時代背景がうかがえます。また、亡くなった子供に対しての家族の心情が伝わってくるように感じます。

どきどきセンターPRESENTS-ココロオドル鹿嶋を再発見-

 鹿嶋市どきどきセンターは、鹿嶋市内の発掘調査や鹿嶋の歴史・文化を伝える事業を展開しています。全24回、鹿嶋市内の発掘調査の出土品からみえる鹿嶋の歴史や文化・食生活など紹介していきます。また、どきどきセンターの企画展や事業をお知らせします。


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